社会不安障害|しのだの森ホスピタル
社会不安とは
社会不安とは、会議で発言を求められたり、大勢の人の前でスピーチをするなど「他人から注目される場面」や、初対面の人、目上の人と話すなど「緊張を強いられる状況」に対して強い不安や恐怖を覚える心の状態です。私たちは強度の不安や恐怖を感じた時、「手足の震え」「息苦しさ」「動悸」「発汗」「赤面」などの身体症状が誰にでも現われます。これはごく一般的な反応ですが、社会不安障害はこれらの身体症状や精神的苦痛が日常生活を送る上で「障害」にまでエスカレートする病です。
発症因子
(1) 遺伝的に不安を感じやすい生物学的病因
(2)小さい頃の体験・育ってきた環境などの心理社会的病因
- 子供の頃に失敗して人前ではやしたてられた体験がトラウマになっている
- 自尊心が高く自らの失敗を認められない
- 子供の頃から人見知りや引っ込み思案の傾向が強い
上記に当てはまる人に、社会不安障害発症の確率が高いのです。
疫学
社会不安障害は、日本国内でも潜在的な患者数は300万人以上にものぼると推定する専門家もいるように、今日ありふれた不安障害のひとつでもあり、特別な病気ではありません。生涯有病率は3〜13%です。発症年齢は、他の不安障害と比較すると低年齢で発症する傾向があり、10代半ばが一番多く、大多数のケースにおいて、20代前半までに発症すると言われています。しかしながら、多くの方は用心深さや臆病さといった社会恐怖の兆候は幼少期からあったことが報告されています
疫学
社会不安障害の基本的な症状は、「自分に対する他人の評価が怖い」という不安や恐怖感の心理的な問題ですが、具体的な悩みの種になるのは、不安や恐怖を感じる場面で現れる身体症状です。
主な身体症状:
左サイドの痛みの原因
- 顔が真っ赤になる
- 汗がダラダラ出てくる
- 手や体、声が震える
- 心臓がドキドキする
- 吐き気
- ロの渇き
- 息苦しさ
- 顔のこわばり
- めまい など
上記のような症状を意識しだすと、「またあの症状が出るのではないか」という恐怖感を覚えてますます緊張を感じる場面への苦手意識が強まるという悪循環に陥ってしまうのです。
<DSM-IVの診断基準>
感染症の戦い
- よく知らない人達の前で他人の注目を浴びるかもしれない社会的状況または行為をするという状況の、1つまたはそれ以上に対する顕著で持続的な恐怖。その人は、自分が恥をかかされたり、恥ずかしい思いをするような形で行動することを恐れる。
- 恐怖している社会的状況への暴露によって、ほとんど必ず不安反応が誘発され、それは状況依存性、または状況誘発性のパニック発作の形をとることがある。
- その人は、恐怖が過剰であること、または不合理であることを認識している。
- 恐怖している社会的状況または行為をする状況は回避されているか、またはそうでなければ、強い不安または苦痛を感じながら耐え忍んでいる。
- 恐怖している社会的状況または行為をする状況の回避、不安を伴う予期、または苦のために、その人の正常な毎日の生活習慣、職業上の機能、または社会活動または他者との関係が障害されており、またはその恐怖症があるために著しい苦痛を感じている。
- 18歳未満の人の場合、持続期間は少なくとも6ヶ月である。
- その恐怖または回避は、物質または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではなく、他の精神心疾患ではうまく説明されない。
- 一般身体疾患や他の精神疾患が存在している場合、基準Aの恐怖はそれに関連がない。例えば恐怖は、異常な食行動を示すことへの恐怖でもない。
症状・診断
病名 | 併発率(%) | 備考 |
---|---|---|
回避性人格障害 | 22.1〜72.催眠療法の減量バージニア州7 | 社会不安障害と最も高い頻度で共存します。特に、 全般型の社会不安障害でその傾向が顕著にみられます。 |
大うつ病 | 35〜80 | 多くの場合、社会不安障害が大うつ病に先行しますが、反対に大うつ病の一時期に限って社会不安障害様の症状が出現することもあります。 |
パニック障害/広場恐怖 | 50 | 社会的状況に限定したパニック発作が出現することがありますが、これは広場恐怖とは異なり、誰かと一緒であっても不安は軽減しません。 |
強迫性障害 | 11.1 |
<回避性人格障害との関係>
回避性人格障害の人は、社会不安障害の人以上に社会生活が損なわれ、引きこもり状態になりやすいのです。回避性人格障害は単に社会不安が強いという特徴だけでなく、潜在的な強迫傾向、活動状態からひきこもりへと急激に転換するなどの特徴を持ちます。
症状・診断
薬物療法
パキシルやフルボキサミンに代表されるSSRIが第一選択薬となります。SSRIは社会不安障害に対し、50〜60%の有効率を有しています。
集団心理療法
- 公衆の前で話す
- 社会的関わりをもつ
- 他人から注視される
- 他人がみているところでパフォーマンスする
上記項目など、暴露経験の機会が与えられるので、その中で状況に慣れていくことが可能となります。また、他の参加者がお手本となったり、周囲からのアドバイスを受けたりできるという利点もあり、短期集中型で治療に取り組めるのが特徴です。当院でも、社会不安障害の集団心理療法の取り組みを行っております。詳細はこちらをご覧下さい。
個人心理療法
- 限定型の社会恐怖、もしくは不安や恐怖の対象となっている出来事や状況が珍しい
- 集団の中で話題にするのが恥ずかしい
- 併存症のために、集団療法がふさわしくない
- 柔軟なスケジュールを望む
- 他にも話を聞いてほしい
上記などに当てはまる方は個人療法をお勧めいたします。
症状・診断
社会不安障害に悩む方は、人前での行為に対して著しい不安や恐怖感を抱く為、症状について積極的に周囲の人へ相談しない場合もあります。家族や親しい友人などの身近な人にさえ、相談する事が恥ずかしいと思っているかもしれません。内面を隠すための頑張りが続くと、本人がどんなに苦しくても周囲にはなかなかその苦しさが伝わらず、症状がますます悪化し、うつ病やパニック障害等の別の疾患を引き起こしてしまう場合もあります。
このような患者様に対しての対応はどうすればよいのでしょうか?
(1)共感し、理解を示す。
まず、第一に共感を呼ぶ会話を心がけてください。自分の悩みを共感してもらえると感じれば、相談をしてくれるようになるかもしれません。回復への第一歩は、周囲の人への信頼と相談から始まります。孤独感にさいなまれることのないように、サポートし合えるように接していくことが大切です。
(2)無理をさせない。
無理を強いるのは逆効果です。病気に対する無理解は更なる悪化を呼び込みかねません。恐怖感による回避行動は、決して「怠け」ではありません。彼らがプレッシャーを感じずに社会生活を送れるように、普段から本人が負担に感じる状況をなるべく作り出さないようにしてあげて下さい。治療の中では、段階的暴露療法の一環として、少しずつ苦手な場面へチャレンジをしていく関わりをしていきますが、あくまで本人のペースを守ります。
(3)「頑張れ」という言葉は禁句。温かく見守る姿勢を心がける。
社会不安障害の方は常に心の内の不安や恐怖と戦い、それでも周囲の人から浮き上がらないように、悩みを抑え、何事もないように振る舞う等、日常生活においても「頑張る」ことを強いられています。そこに「頑張れ」と言われることは、非常に辛いことだと思います。むやみに「頑張れ」と励ますよりも、暖かく見守ってあげることが大切です。
(4)落ち込んでいる時は、気分転換に誘わない。一人の時間を与えてあげる。
苦手な事にチャレンジした時、「失敗をした」「恥をかいた」と思うことはたくさんあると思います。そんな人に対し「気分転換に××へ行こうよ」と、何かの行動に誘うことはできる限り避けた方が良さそうです。悔しさや恥ずかしさに満ち、落ち込んでいる状態で、人前に出る行為は更なる恐怖を呼び、回復の余地を奪ってしまいかねません。落ち込んでいる時は、一人になる自分の時間を存分に与えてあげるとともに、悩みを聞いてあげたり、共感することが次へのチャレンジにつながると思います。
(5)その他
状況に慣れてくると不安は徐々に軽減されてくるので、「最初の数時間よりも、これよりひどい不安を体験することはない」というアドバイスをかけてあげるのも良いかもしれません。
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